世界で一番ロマンチックな夜を過ごせる街。

909080.jpg


そう思って頑張ってみた。
確かにパリはどう見たってロマン主義が造り上げた街で、そして文化なんだ。
写実主義が追い出されるのも無理はない。

俺はいつも以上に優しい気持ちでその文化に触れてみることにした。
パリのカフェでカフェオレとクロワッサンを食べ、コンコルド広場でまったりして、
ルーヴル美術館の前で読書して(入ってしまったら観光客だし、既に行った事があった)
それに地下鉄で淡々と移動を繰り返す。
昼食にはガレットを食べ、トリスタン・ツァラ、マン・レイの墓参りをする。
夕方になれば、リヨンのカフェで薄いエスプレッソを飲みながら、待ち人を待つ。
セーヌ川沿いを散歩しながら、観光ボートの目を避けて何度かキスをするんだ。
夜になったら適当なレストランに入って適当に食べる。
何も気取らないし、何もケチることもない。
外に出ればエッフェル塔は既に電飾をの光を放っていて、チカチカ眩しいが、それでも確かにうっとりしてしまう単純な心って奴。それならそれで逆らう必要もなく呆然と眺める。

「今夜は最高だ。」

食後に飲んだエスプレッソのモルヒネを最大限に意識してしまえば、エッフェル塔に登る恐怖心なんて、1人でホラー映画を観るときの優越感より果てしなく恐怖だ。

だから俺は足を竦めて外を見る。この世界に満ち溢れる恐怖を受け入れるのだ。
恐怖は次第に意味を失い、ただの人口的に作られた恐怖だと感じてしまえば、後はロマン的思考が勝手に次の感覚に導いてくれる。

言葉では言いようがないほどの世界へ。

その瞬間、俺はパリの夜景全てをコーヒーに溶かして味わうことができる。

俺が決めたルール。
「一杯のコーヒーをどれだけ楽しめるかが勝負。」

その夜は、完璧な勝利を収めたに違いない。